無塩せきって何?1歳の子供が食べていいウインナーの本数は?【現役内科医が解説】

最近、ネット上で「無塩せき」の表示を見かけることが増えましたね。でも、無塩せきって何?体に良いの?そんな疑問をお持ちの方も多いと思います。そこで今回は、無塩せきの意味や、発色剤の有害性について、そして子供に食べさせる際の注意点について調べてみました。

目次

1. 無塩せきとは何か?

まず、「無塩せき」とは何かをご説明します。無塩せきとは、ハムやソーセージなどの加工肉製品を作る際に、発色剤を使わない製法のことを指します。通常、発色剤は肉の色をきれいに保つために使われます。発色剤を使うことで、ハムやソーセージが鮮やかなピンク色になり、見た目が良くなるのです。

しかし、無塩せきではこの発色剤を使用しません。そのため、製品の色は少し茶色がかっていたり、自然な肉の色になります。見た目は少し違いますが、無塩せき製品は自然な風味が特徴です。

2. 発色剤は結局有害なのか?

次に、発色剤が有害なのかについてお話しします。発色剤には、亜硝酸ナトリウムなどが含まれます。これらは少量であれば問題ないとされていますが、過剰に摂取すると健康に悪影響を及ぼす可能性があると言われています。特に、亜硝酸ナトリウムは胃の中でアミンと反応して、発がん性物質であるニトロソアミンを生成することが知られています。

発がん性があるとする研究はあるものの、なんとも言えないと結論づけている研究もあります。

有害とする研究

  1. メタアナリシスによる証拠:
    • Sasanfar et al. (2023) のメタアナリシスでは、食事からの亜硝酸塩およびN-ニトロソ化合物(NOCs)の摂取が胃がん(GC)および食道がん(EC)のリスクを増加させることが示されました。特に、食事中の亜硝酸塩摂取はGC(相対リスク = 1.33, 95% CI = 1.02–1.73)およびEC(相対リスク = 1.38, 95% CI = 1.01–1.89)のリスクを有意に増加させることが報告されています​ (MDPI)​。
  2. IARCの見解:
    • 国際がん研究機関(IARC)は、亜硝酸塩が体内でニトロソ化合物に変わる条件下では、人に対しておそらく発癌性があると分類しています​ (MDPI)​。
  3. 具体的なリスクの評価:
    • 一部の研究では、高濃度の亜硝酸塩およびN-ニトロソジメチルアミン(NDMA)の摂取が大腸がん(CRC)のリスクを増加させることが示されています。たとえば、NDMAの高摂取はCRCのリスクを有意に増加させる(相対リスク = 1.36, 95% CI = 1.18–1.58)とされています​ (MDPI)​​ (Cancer Trends Progress Report)​。

これらの研究結果は、亜硝酸ナトリウムおよび関連化合物の高摂取が特定のがんリスクを増加させる可能性があることを示唆しています。

無害とする研究

一方で、Catherine P. Bondonno et al. (2023) の研究では、現在の証拠は一貫していないと指摘されています。この研究は、発癌リスクと食事中の亜硝酸塩の関連性について、さらなる研究が必要であるとしています​ (Phys.org)​。

3. 亜硝酸ナトリウムの摂取量について

亜硝酸ナトリウムの摂取量については、健康機関が基準を定めています。世界保健機関(WHO)と国連食糧農業機関(FAO)の合同専門家会議によると、亜硝酸ナトリウムの一日の許容摂取量(ADI)は体重1キログラムあたり0.07ミリグラムとされています。

一般的なウインナー1本(約30グラム)には、約0.5~1.0ミリグラムの亜硝酸ナトリウムが含まれています。これは製品や製造元によって異なるため、パッケージの成分表示を確認することが重要です。

体重別:1日あたりに食べて良いウインナーの本数

体重で換算すると、以下のようになります。

体重10kg:許容摂取量 = 0.07mg/kg × 10kg = 0.7mg/日
ウインナー(1本あたり0.5~1.0mgの亜硝酸ナトリウムを含む)= 約0.7~1.4本

体重20kg:許容摂取量 = 1.4mg/日
ウインナー = 約1.4~2.8本

体重30kg:許容摂取量 = 2.1mg/日
ウインナー = 約2.1~4.2本

体重50kg:許容摂取量 = 3.5mg/日
ウインナー = 約3.5~7本

注意点

  1. 総合的な食事のバランス:
    • ウインナーだけでなく、他の加工食品や外食でも亜硝酸ナトリウムを摂取する可能性があるため、全体のバランスを考慮することが重要です。
  2. 子供の摂取量:
    • 子供は体重が軽いため、許容摂取量も少なくなります。特に小さい子供には、発色剤を含む食品の摂取を控えるのが望ましいです。
  3. 毎日食べるわけではない:
    • この本数は、毎日ウインナーを食べ続ける時の本数です。毎日必ず食べるわけではないのであれば、少し多くなっていても気に止むことはありません。

4. ウインナーは子供に食べさせない方が良いのか?

では、子供に発色剤を含む食品を食べさせることについてはどうでしょうか?特に小さな子供の場合、体がまだ成長段階にあるため、添加物に対する感受性が高いとされています。そのため、できるだけ発色剤を含まない無塩せきの製品を選ぶのが良いでしょう。具体的には、3歳くらいまでは発色剤を含む加工肉を避けることが推奨されます。その後も、あまり頻繁に与えるのではなく、適度にするのがベストです。

上の通り、体重重10キログラムの子供の場合、亜硝酸ナトリウムの許容摂取量に基づいて計算すると、一日に食べても許容されるウインナーの本数は以下の通りです:

  • 亜硝酸ナトリウムが少ない場合(0.5ミリグラム/本):約1.4本
  • 亜硝酸ナトリウムが多い場合(1.0ミリグラム/本):約0.7本

つまり、体重10キログラムの子供には、一日にウインナーを1本以下に抑えることが推奨されます。できるだけ無塩せきの製品を選ぶことで、亜硝酸ナトリウムの摂取を抑えることができます。

まとめ

いかがでしたか?無塩せきは発色剤を使わない自然な製法の製品で、発色剤のリスクを避けたい方にとっては良い選択肢です。特に小さなお子さんには、発色剤を避けた食品を選ぶことで、将来の胃がんのリスクを避けることができるかもしれません。

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